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独り言のようなブログだよ

ちょっとした妄想と日常と少しの現実逃避とMr.Children

短篇「残り物」

「そういえば、悠太郎と出会ったのってもう3年も前になるんだっけな」

 

そー口を開いたのは、どことなく、有名バンドのボーカルから身長だけを小さくしたような友人、北村 亮太だった。

こいつは大学でできた数少ない友達であり、なんとなく嫌いになれないのが不思議だ。一緒にバンドを組んで、ウチのボーカルの女の子と付き合ってる。俗に言う、音楽の方向性が合わなかったみたいな解散理由は本当はこんな奴がいるのが理由だろう。でも、嫌いにはなれない。

 

「あーうんそうだな、俺らもう4回生だからそーなるよな」

 

大学の4回生、そもそも、回生って表現は関東ではあまり使われてないらしい、俺も、このうるさいけれど、人情にあふれた街にやってきたときに初めてしった。

 

「どーすんのよ、東京帰るのやっぱ」

 

4回生の春

残りの学生生活は1年を切る寸前だ、あんなにも、鬱陶しかった制服すらも愛おしくなって、堅苦しいネクタイと、まっさらのカッターシャツを包み隠すような背広を装備して、俺たちは戦いに出かけなきゃならない、そんな日々がもうやってきたのだ。

 

「うーん、まぁ、それも選択肢の1つだし、東京で就職すれば、親元で暮らせるから金も溜まるしなぁ」

 

我が家はいたって普通の父親と母親と妹だ

父親は公立高校の教師で、厳格だけど、母親には頭の上がらないし、妹の梨沙には、既に汚いものとして扱われてる。母親は、もともと教師だったが、俺を出産してからは週二回ほど、非常勤をやったりしながら、お小遣いを稼いでいる。梨沙に関しては、顔だけは良いと思うが、それ以外は最悪な妹だ。

 

なんてことを頭の中で、家族の顔を思い浮かべると、一時期、元カノ影響で好きになった。チャットモンチーの歌を思い出した。あれなんて歌だっけ……

 

「まあーがんばって、僕はほら、ギターで世界を」

「もういい」

「はーい」

 

大学に入ってからは、春は桜を見ながらBBQをして、リア充という言葉がぴったりな、生活を過ごしていた。そんな俺たちにしては、今年の春の到来は、現実の到来でもあった。そんなことを考えていると、もう1つの春がやってきた。

 

「おはよ!あんたらなにしてるん?また得意の現実逃避?」

 

そう、ポールとジョンの創作活動を邪魔するのは、胡散臭い関西弁と少しとがった八重歯が特徴の女、長澤 春歌である。俺の数少ない女友達で、できれば、大手企業の内定よりも、彼女からの内定通知をいただきたいと、そう思ってる。

 

ベースから、少し硬いバックに持ち替えて、俺たちの春はもう、終わりを告げようとしている。

でも、桜はまだ咲いていない