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独り言のようなブログだよ

ちょっとした妄想と日常と少しの現実逃避とMr.Children

短篇3「残り物」

残り物には福がある。

なんて、ことわざを信じていいのか、1番最後に引いたクジは見事に大トリを引いてしまった。

 

「やばいやばい!ウチらラストじゃん!トリじゃん」

 

高揚した声で話すのはうちのバンドのボーカル、中井りか、AV女優みたいな名前だが、見た目はさっぱりしたショートカット女子で春歌のような綺麗系とは違い、ボーイッシュというワードがよく似合う。

 

「あーやっちまったな、本当にやっちまったな」

この男は、俺の2歳上で、ドラムというだけで、バンドのリーダーであり、髭とパーマで、どこかの国民的バンドのドラマーに少しかぶせてきてるようにしか見えない、2回の留年、現在6回生の山さん。

 

「いいよー!僕はいいと思う!最後に僕らの歌になるなんて素敵!」

 

と北村は相変わらず能天気な発言をしてみせた。しかし、今の俺にはありがたい。

 

ゴールデンウィークを終え、いつの間にか5月も終わりを告げようとしている。そんな時期に俺たちは、文化祭のliveの登場順をクジで決めていた。普通は実力だが、経験年数とか、そんなんで決めたりするものかもしれないが、うちのサークルには、クジで決めるという、長年の伝統がある。

 

「すまん、みんな」

 

「残り物には福があるだね」

 

「まぁ、やることやるまでよ」

 

「そーそーウチら、このサークルじゃ、上手い方だし、お客さんも納得してくれるよ」

 

あまり、人に入れ込みすぎないように生きている俺も、やはり、彼らと趣味の一環として、音楽を続けてきて良かったと感じる。

サークルの中で残り物だった、そんな俺を

 

「とりあえず、景気付けに飲みに行くか」

 

「山さんのおごりですか?」

 

「北村、山さん昨日パチンコで勝ったって呟いてたぞ」

 

「よっしゃー帰るぞ!卒論やりますー!」

 

なんていう馬鹿な会話を繰り広げながら、部室を後にする。

 

りかは、どっかの会社の内定をもうもらったらしい。山さんは、実家の不動産屋を継ぐと言っていた。この2人は残りの学生生活を謳歌する土壌を整えたようだ。北村に関しては東京でも音楽を続けるらしい。就職はする気がないと親にははっきりと言ったらしい。

皆が皆、それなりにこの先の未来を固めつつある中、俺は相変わらず残り物のままだった。

 

「じゃあねー!」

 

そう言って、りかと北村は2人で帰っていった。この後、恋人同士なら当たり前のような幸せを堪能するのだろうか、すこし、いやらしい妄想をした自分が嫌になる。

 

「ねぇ、山さん、俺だけ……やっぱり、残り物です」

 

なにが?とでも、言いたそうな顔をした山さんの顔はほんの少しだけ、ひょっとこに似ていた。