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独り言のようなブログだよ

ちょっとした妄想と日常と少しの現実逃避とMr.Children

短篇5「残り物」

 

「それでは、簡単に自己紹介をお願いします。」

 

「はい、〇〇大学、経済学部、国際経済学科、桜井悠太郎です。好きなものはビートルズ、趣味はベース演奏で、大学の友人とバンドを組んでます」

 

「そうですか、では、あなたのバンドメンバーの立ち位置を教えてください」

 

「はい、えーっと、残り物です。」

そういうと彼女は吹き出した。

 

「そりゃ、落ちるわ、自分からそんなネガティヴなこと言ってどうするのさ」

「嘘はよくない」

「はいはい、それでは、自分の長所を教えてください」

「はい、私の強みはどんな色になれるということです。バンドメンバーは我が強い子たちばかりなので、色んな色にそまりながら、ひとりひとりに合った関わり方をすることで、解散寸前の危機を何度も回避した経験があります。どんな色に染められる私は御社でも、御社ならではの色に染まり、貢献することができると思います。」

 

「どんな色にも染まれるということは、つまり、自分がないというふうにも受け止めれるのですが?」

 

「えっ……あーそれが、自分です。」

 

「本当に面白いよね、悠太郎ワザとでしょうもう…」

 

「うるさい……嘘つけないし、よくわかんないんだよこういうの、そもそもなんで22年の人生を禿げた親父に10分間で判断されなきゃいけないんだよ」

 

「たしかに、それは同感」

 

「あーやだな、社会人とか無理無理……やりたいことないし」

 

「悠太郎だって夢あったじゃん、昔よく語ってくれたじゃん、カメラマンになる!って」

 

「カメラはもうやめたし、才能ないから」

 

「大丈夫!ベースも才能ないから……」

 

「春歌!!」

 

「冗談、冗談、どっちも才能あるよ、だからさ、前みたいに私を撮ってよ!悠太郎に撮られると、可愛さが100倍増しになるからさ」

 

「俺より、スノウの方が盛れるよ」

 

「それは、言えてる」

 

カメラマンか、考えてもなかった。少し前というかかなり前に辞めたんだっけ、きっかけが彼女に振られたからとかいう恥ずかしい理由で

 

「ちゃんと夢あるなら、夢を追いかけようよ、カメラマンの世界は詳しくないけど、東京を拠点にすればいいと思うし、アルバイトからでもいいじゃん!」

 

「そうだな…」

 

「私たちってさ、夢を叶えるのに、とっても恵まれた環境にいるっていうこと自覚しなきゃいけないんだよ」

 

たしかに、俺の家は生活にそこまで、困ってはいないし、それは、春歌の家もだった。母子家庭の、りかが、安定を求めるのは環境的に仕方ないことで、それに比べると俺は恵まれていた。

 

それから、俺たちはつまらない思い出話しや、夢の話を続けた。2人で過ごす時間はすぐに過ぎていった。

 

「あっ、そうだ、肝心なこと聞くの忘れてた」

「なに?」

「貴方が、長澤春歌を志望する動機はなんですか?」

ニコッと笑ったその笑顔の上には少しずつ太陽が昇り始めていた。

 

そして、俺は第一志望から初の内定をいただいた。