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独り言のようなブログだよ

ちょっとした妄想と日常と少しの現実逃避とMr.Children

短編6「残り物」

彼女の部屋と自分の部屋、どちらで身体を重ねた方が、興奮するのか、なんてこと考えながら、俺は春歌のベッドの上に横たわっていた。隣では、目を開けてるときには考えられないぐらいおとなしい寝息をたてながら、ギュッと俺のシャツの裾を握りしめてる春歌がいた。

 

「きもちよかったなぁ」

 

思わずそう言葉に発してしまった。彼女は一向に起きる気配もなく、少し安心しながら目を瞑る。

 

もう何度キスをして、こーやって、裸で抱きしめあったことだろう。普段から聞きなれた声も仕草もベッドの上ではとても新鮮で色っぽかった。 

 

「まぁまぁ変態だよなぁ…」

 

そう言いながら、眠ってる彼女の唇にキスをして、優しく頭を撫でた。その瞬間、ゴンという音がした。一瞬にして、身体にまとっていたふわふわとした気持ちよさが、痛みに変わった。

 

「えっえ……びっくりした……!」

「イテテ……」

「……ばかぁ……」

 

突然、頭を上げた彼女と唇から離れた俺の頭が気持ちがいいぐらいにぶつかった。

 

「ごめんごめん……」

「せくはらだぁ……!」

 

そういう彼女を見て、止まらなくなった気持ちを、彼女の唇にむけた。少し漏れる息はとても、柔らかく、また、自分自身の奥にある隠したい部分を刺激する。

 

「きょうはもうおしまい……」

「わかった。」

 

彼女の言うことは素直に聞いておくべきだ。それに、さっきまで、俺たちの前に立ちはだかっていた、薄い壁も、切らしてしまった。

 

「All you need is love, all you need is love,」

 

「愛こそはすべて」を歌い出した彼女を見て、安心感と共に、もしものことを考える。でも、今はそんなこと考えないようにしよう。冷房がなければ、とても、快適に過ごせるとはいえないこの季節に、彼女の歌声を聞くと、また季節が変わったのかと錯覚しそうになる。

そして、俺は2番に入る前にもう一度彼女にキスをした。

 

「ううっ」

「へへっ」

「なにっ……」

「好きだよ」

「知ってる」

「愛してる」

「知ってる」

 

すこし、そっけないなと思いつつ、この関係がずっと続けばいいと願っている。

 

「もう一回して……」

 

そう言うと、彼女は目を閉じた。

 

こんな、瞬間を夢見てた。少しやらしく、非日常的な、こんな瞬間を……

叶いもしないと決め込んでしまうのは、あまりにももったいない。明日も君と過ごすのだから、その思い出を記憶だけじゃなく、フィルムにも収めよう。もう一度、少しだけ、重たい夢を持ちたくなった。

 

「おやすみ」

 

少し前までは、閉じるのが怖かった瞼も、今はちっとも怖くない。