読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

独り言のようなブログだよ

ちょっとした妄想と日常と少しの現実逃避とMr.Children

短篇7「残り物」

 

残り物には福がある

 

そう言ってた、あいつの言葉通り、俺らのバンドは最後のステージに立っていた。

 

最初は少し気分が乗らなかった。女の子がボーカルで、周りが男で固められてて、うさんくさいバンドみたいな組み合わせはちっとも惹かれるところがなかった。

 

俺は昔から残り物で、中学のときのツレに無理やりバンドに入れられ、誰も選ぶことのなかった残り物のベースを担当した。それが俺とベースの出会いだったし、そんな趣味をちょこちょこ続けていたら、いつの間にかのめり込んでいた。

 

「あぁ僕たちは幸せものだ、今日ここに立てて、まだ、僕らの音楽は日本にも世界にも響いちゃいないけど、せめて今日の目の前の人に、すこしでも、心に残ればいいなとおもうんだ!」

 

相変わらず、ライブになると熱くなる。変な奴だ、でもきっと、俺もあいつも、今ある夢を掴み取るために頑張るのだろう。

なんとなく、作った。ジョンとポールもびっくりな歌。なぜか歌うのはジョンでもポールでもないヨーコなんだ。よく俺たちは解散せずにここまでやってこれた。俺たちはその面ではビードルズより優れている。

 

なんてこと考えているとギターの音が鳴り響いた。

 

あぁ、最後の歌が始まる

 

「ありがとう!!」

 

その一言を聞いた瞬間に4分とすこしの歌が終わった。

そして、俺たちの青春がまた思い出に変わった瞬間でもあった。客席からは拍手が上がる、あのお客さんの中に、好きな人がいると思うとすこしこっぱずかしくなる。

 

ビートルズが好きでよかった。

アビイ・ロードのメドレーのように、荒々しく、終わることはできないけれど、これが俺たちの出せる精一杯だ。

 

終わったんだ。

 

LIVEの打ち上げの帰り道、北村とりかと別れ、俺と山さんと2人だけになっていた。

 

「あーぁ、うらやましいな」

 

山さんが声を漏らした先には、春歌が立っていた。

 

「かっこよかったよ」

 

「ありがとう」

 

「違うよ!山さんのドラムが」

 

「なんだよそれ」

 

そんな、くだらない会話をしている内に、いつの間にか山さんはいなくなっていた。

「そー言えばね、試験ダメでした」

「……そっか」

「まぁ、最終まで行けただけ、ラッキーだよね」

 

こういうとき、人はなんて言葉をかけたら、いいのかわからないものだ、でも……

 

「大丈夫、春歌なら」

 

根拠はないけど、自信はある。

なんとなく、それだけで、こんなこと言ってみた。それを聞いた彼女の表情が少し柔らかくなったのを月明かりの下で感じた。

 

「さぁ、東京に帰ろっ」

 

久しぶりに感じることができた。秋に別れを告げながら、迫りつつある冬の寒さが、身体を包み込む。

 

あと少しで、俺たちの大学生活は終わる。